酒場放浪記でおなじみの吉田類さんの酒エッセイが、

とても感動したので是非ご紹介したい

 

観天/望気

 今宵の一献

 もう20年以上も前から、全国各地の酒場を巡り歩いている。

その土地の日本酒を味わい、そこに集う人々と出会う。

お酒はおいしいだけでなく、最高のコミュニケーションツールだから

酒場めぐりはやめられない。

酌み交わせば、あっという間に心の距離が縮まる、

心と心の壁をとかすアイテムだ

人と知り合うことで、人生は豊かになる。

 

日本酒は美しい自然の中で進化している。

それぞれの蔵元では、個性あふれる酒が造られている。

日本の酒に新しい風が吹いている。

日本酒が海外でもっと受け入れられる可能性は大いにある。

なぜなら「おいしいもの」は国境を越えて理解されるから。

さらに僕は、海外に行った際に、日本酒は百薬の長だと勧めている。

 

日本酒を売り込むターゲットは

同じ醸造酒であるワインを愛する欧米人。

特にフランス人は日本酒を味わい、

理解するための舌が備わっているように思う。

海外で評価されることで、洗練されたイメージが日本で広がり

日本の若者が関心を持つようになる。

穏やかにやさしく食の好循環が展開されていく。

 

コロナ禍の現在、

酒場は営業自体が難しく、各地の蔵元で在庫が積みあがっており

特Aの酒米を生産している農家でさえもコメが余っていると聞く。

心が痛む限りだが、しばらくはじっと耐えしのぐしかない。

しかし必ずコロナは終息する。

終息後の人と酒の向き合い方を展望したい。

 

僕は酒を飲むときに、人との距離、間合いを大切にしてきた。

余談だが、正統派のバーでは

バーテンダーはお客との距離を大事にしているという。

面と向かって話すことが感染リスクと捉えられたことで

こうした飲み方がより意識されてくる。

今宵の一献は日本酒をスマートに楽しんでみてはいかがだろうか。

 

                    吉田類 (酒場詩人)